9月19日『戦場/マリリンと頂上の旗』

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午前6時前に起床。ホテルの部屋でメイクの準備の後、マリリン・モンローのメイクに入る。体全体を白く化粧する必要もあるので時間がかる。
8時過ぎに先発隊が海辺に出発、向こうで準備にかかる。私は9時過ぎにホテルを出て、青木君の車で現地に向かう。
現地では、佐谷周吾さん、フォトグラフィカの沖本さんとライターのタカザワさん、兵庫県立美術館の江上さん、豊田市美術館の都筑さん、美術手帖ライターの山内さんらも合流。
午前、薄日の射す空の下、波は大きかった。マリリン・モンロー登場のシーン、服を脱ぐシーンなどを撮影。ヒールのかかとを砂につけるとググッと沈み込んでしまうので、ずっとつま先だけで立っていなければならない。でも優雅さは必要である。これが長時間に渡るとかなり厳しい。無理なことをしているわけだが、そうやって生まれてきた「自然な感じ」は「自然なんだけど不思議な感じ」に繋がっていく。そう期待して耐える。
*写真1は現場に向かうマリリンメイクのモリムラ

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マリリン・モンローのシーン終了後、撤去。時間が押しているため、一同コンビニでほとんど立ち食い状態で食事を済ませ、すぐに移動。「戦場の頂上の旗を揚げる」の撮影場所へ行く。
旗を揚げる山の頂上となる小高い砂山を荒れた雰囲気に演出するため、全員で流木などを拾って来て積み上げる。じょじょにそれらしくなって来る。
夕暮れをねらってビデオが回る。風の状態が予想をはずれあまり吹かないので、旗のはためきに苦労するが、夕景の空の状態はベスト。沈み行く夕陽を背景に旗を立てるシーンを撮る。私の正面からのカメラで、「報告します!」ではじまる私のセリフのシーンもおさえる。練習ではとちってばかりいたのに、本番では失敗なく何テークもやれたのは不思議というほかない。
沈み行く夕陽を背景に様々なシーンを岸本さんのカメラがおさえる。
御前崎の夕陽はいろいろなイマジネーションを引き出してくれた。日本神話の世界にも通じる奇妙な気配。夕陽は、ある時は青春のシンボルであったり、BGMになにが流れるかで、昔の刑事ドラマのタイトルバックにさえなりうるが、御前崎ではそういう連想は湧かなかった。横山大観は好きになれないが、大観の日輪は、ほんとうにあるんだなと実感する。
硫黄島に旗を掲げるシーンをいくつものイマジネーションへと横滑りさせてゆくのが、今回の大きなテーマであった。特に「実際の硫黄島ではアメリカ海兵隊は当然のごとく星条旗を戦場の頂上に自分達のアイデンティティとして掲げたが、あなたならあなたの戦場にどんな旗を掲げますか」というのが今回の横すべりさせるイマジネーションの重要なものだった。しかしそれで終わりではないのかもしれない、という「続き」を感じる。
マリリン・モンロー、血のドレス、アメリカ兵、日本兵、夕陽、海、空‥‥。役者はそろった。もう一度、絵コンテを見直したい。当初の計画から、おおいに横滑りしてしまって、意外な地点に着地する可能性もありそうだ。
*写真2は、夕陽を背景に休息する兵士達。明治時代の古代神話を扱った油絵を思い出す。